「心理学とは何か?」という問いに、私が答えるのは至難の業です。あまりにも漠然としすぎていて、「これだ」と言える答えがないからです。念のため書籍を基に述べると、「心理学とはその言葉の通り、心についての科学的研究を目指す学問である。心理学の最終目標は人間の心の理解であり、その理解を通して何らかの形で人類の福祉に役立つことを目指している。しかし、そのための手っ取り早い簡便な方法は存在しない。通俗雑誌の記事に見られるような表面的な、興味本位の理解は、間違いを生じやすいし、時には有害である。むしろその代わりに、長い地道な研究の積み重ねが必要である。」 (『心理学』)
心理学に縁がない方には、何を言っているかよくわからないかもしれませんが、上記の通りです。人間が何を考え、どのようなときにどのような行動をするかを研究し、それを社会福祉に役立てるのが目標だというわけです。そして、「心理占い」といった類のものは心理学の対象及び目的には反しているということでしょう。4枚くらいの絵を見せて選ばせ、それでその人の性格等を指摘するといったことは、心理学における研究ではおそらく不可能です。占いと心理学は違うと断言して良いです(占いは間違っているという意味ではありませんよ)。
一般の方が心理学に抱いているイメージと、実際の研究方法にはかなりのズレがあります。あおくまも大学に入ってそのギャップにやられました。カウンセラーを目指して心理学を学ばれる方が多いですが、カウンセリングを行うのは心理学の分野のごく一部に過ぎません。それだけ心理学は裾野も広く、奥も深いです。なので、「心理学とは何か?」に答えるのが難しいんです。
また、臨床心理学とカウンセリングと心理療法は区別されて考えられています。 「臨床心理学は、心理学部に属し、心理学としての実証性と専門性を重視します。活動としては認知行動療法を中心として、他の専門職とも共同してコミュニティにおける専門的で統合的な介入を目指します。実証的研究に裏付けられたアセスメントに基づく介入が重視されるため、介入技法だけでなく、異常心理学の知識と研究能力も備えていることが求められ、博士号を有していることが前提となります。このことからわかるように臨床心理学は、臨床面だけではなく、学術的な面での評価も高い学問となります。
それに対して「カウンセリング」とは、教育学部に属し、ロジャーズ(Rogers, C. R.)が提唱した人間性を重視する活動として、心理学にはこだわらない、広い領域に開けた人間援助の総合額を目指します。比較的健康度の高いクライエントの問題解決の援助がテーマとなっており、異常心理学やアセスメントは、あまり重視されません。また、専門性よりも人間性が重視されるといった特徴があります。
心理療法は、精神分析などの特定の理論を前提として、その理論に基づく実践を行うことを目指すものです。したがって、信奉する学派の理論と技法を習得し、それを適用することが重視されるので、アセスメントでは、その学派の技法が適用できるのかどうかの判別が重要となります。また、特定の学派の理論の習得訓練が目標となるので、大学のような学術的な場ではなく、私的な研究所での教育が中心となります。その学派の技法をいかに適用するかが中心のテーマであるので、技法の適用を検討する事例研究は盛んに行われるものの、学術的な研究にはあまり関心が払われません。」(『よくわかる臨床心理学』)
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