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生活保護について
生活保護とは?

 生活保護とは、厚生労働省によれば、「資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度」です

参照  厚生労働省 生活保護制度

 簡単に言えば、手持ちの現金も、預貯金を含めた資産もわずかしかなく、すぐにはまとまった収入が見込めず、親族からの援助も得られないような危機状態の時に、最低限の生活費がもらえるという国の制度です

 私も過去に生活保護を受けていた時期があります。奨学金として借りたお金(つまり借金)が250万円ほどあり、現金が10万円ほどしかない状態で申請しました

 生活保護は、国民に与えられた立派な権利です。後ろめたさなどあるかもしれませんが、恥ずかしいものではありません。借金することは推奨しませんが、生活保護を受けることができる状態であれば、積極的に選択肢の一つに入れてください。生活保護は最後の手段ではありますが、最初に考えるべき手段です。情報を集めるなど、準備をしておいて損することはありません

 生活保護は国の制度ではありますが、窓口は地方自治体(市区町村)で、対応もそれぞれですので、当時あおくまが受給していた千葉県柏市を例にとって説明していきます

 

生活保護によってもらえる金額
  1. 計算方法

     生活保護は、8つの扶助(@生活扶助 A教育扶助 B住宅扶助 C医療扶助 D介護扶助 E出産扶助 F生業扶助 G葬祭扶助)から成り立っていますが、毎月決まって現金で支給されるものは、生活扶助と教育扶助と住宅扶助だけです

     基本的には以下の式に当てはめます。


    最低生活費

    【a】生活扶助基準(第1類)+【b】生活扶助基準(第2類)+【c】障害者や母子世帯への加算額

     参照  厚生労働省 生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法


     【a】は、主に個人として必要な金額です。【b】は、世帯として必要な金額です。【c】は障害者手帳を持っていたり(1)、母子(父子)家庭であったり(2)、中学生修了前の子どもを養育している場合に加算される金額です。(1)と(2)を重複してもらうことはできず、どちらか高い方だけ加算されます

     精神障害者保健福祉手帳2級を所持している、34歳、独身、家賃38,000円のアパートに一人暮らししている場合で考えます

     柏市の級地(地価や物価を基にした階級のようなもの)は「2級地-1」なので、【a】は36,650円になります。【b】は39,520円になります。【c】は24,570円になります。これに家賃38,000円を加算します。柏市では45,000円まで住宅扶助が出るので、家賃が38,000円の場合はそのままの額が加算されます。

     合計は138,740円です。仮に5歳の子どもがいる場合でプラス19,220円です

     忘れてはいけませんが、ここから、収入分が引かれます。収入は、働いて得た賃金はもちろん、障害者年金や諸手当も含みます。もし障害厚生年金2級をもらっている場合、平成27年7月28日現在では2ヶ月で219,249円なので、1ヶ月分の109,625円が毎月引かれます。

     そのため、仮に障害厚生年金を受給していて、パートやアルバイトで30,000円の収入があった場合、最低生活費を上回るため、生活保護費は支払われないことになります

  2. 生活保護費についての補足

     生活保護を受けると、国民健康保険から抜けることになります。では医療費はどうなるのかと言いますと、現物支給です。もちろん薬などを直接もらうわけではありません。病院の受付で説明します。それで終わりです

     つまり、医療費が無料になります(ただし、生活保護に対応している医療機関に限る)。介護の費用も同じような感じになると思います

     私はもらったことはないのですが、出産や葬儀にかかる費用は、その都担当のケースワーカーさんに申請します。生業扶助についてはよくわからないのですが、例えばスーツを持っていない場合に担当のケースワーカーと相談することになると思います。でも私だったらちょっと相談しにくいです

     それ以外にも、NHK放送受信料、下水道使用料、粗大ごみ手数料、駐輪場使用料、市県民税、国民年金保険料、保育料が免除されます

     先ほどの例で、収入が最低生活費を(1円でも)超えると、生活保護が受けられなくなると書きましたが、生活保護受給者がなかなかそこから抜け出せない最大の要因は、この補足部分にあります

     家庭にもよりますが、医療費、NHK受信料、下水道使用料、国民年金保険料だけでも少なくとも20,000円はかかります。要するに、ギリギリの収入額で生活保護から抜けてしまうと、むしろマイナスになってしまうんです。生活保護費の基本料プラス50,000円くらい一気に稼げるような職に就かなければ、抜けようにも抜けられません。

     

生活保護受給までの手順
  1. 生活保護を受給したくなったら

    基本的な流れ

    相談  申請  調査  決定・通知


     仕事が見つからない、しばらく働けそうもないなど、先の見通しが立たなくなった時点ですぐに行動に移してください。申請してもすぐにお金がもらえるわけではありません。緊急事態が長く続きそうであれば、俗に言う「街金」には絶対に手を出さず、生活保護を受給する覚悟を決めてください

     生活保護を受けるためには、まず市区町村の生活支援課に、申請書を提出します。その際、資産についての説明と確認が必ずあります。現金だけではなく、資産がほとんど残っていないことが条件となります

     有名な話ですが、車は資産になるので、車がなければ仕事や生活が成り立たない場合を除き、原則売ることになります。その他にも、高価な貴金属類なども売ることになります。すぐにお金に変わるものは、全て売ります。売れる物は努力して全て売り、それでも尚、現金が1ヶ月の生活費もない程度になった時、ようやく申請を受理してもらえます

     尚、生活保護を受給するに当たっては、借金ができません。そのため、借金がある場合は、原則的には債務整理(自己破産)してからの申請となります

     行政は、申請を受理すると、1〜2週間程度かけて資産調査を行います。具体的には、まず家庭訪問して状況を確認します。と言っても、脱税の調査ではないので、いきなり家に入ってくることや、押入の隅までが調べ尽くされることはありません。もちろんこちら側は抵抗する理由もないのですが、許可も取らず確認しようものなら犯罪です。家庭訪問されるという被害イメージを抱きがちですが、むしろ、もうどうしようもないということをアピールする場になります

     一方、裏では兄弟や親など、親族に援助の可否を確認しています。親族と疎遠になっていて、連絡先を知らなくても、そこは行政側が調べて確認しているようです(親族に確認の電話をすることの許可を申請時に取るため、独自に進めます)。親族が余程裕福な生活をしていない限り、生活保護申請を却下されることはないと思います

     生活保護の調査ですが、当然金融機関にも及びます。通帳の明細も事細かにチェックされます。私の場合、地方銀行の口座の一つを申請し忘れていたのですが、しっかり調査されていました。確か1,000円くらいしか残高がなかったので、怒られることはありませんでしたが、最初にもらえる金額からはその金額分しっかり引かれていました。実店舗が存在する金融機関は、おそらく全て調査されます。間違っても変な気は起こさないようにしてください

     ここまで書くと、恐ろしく厳しいように感じるかもしれませんが、相談には乗ってもらえます。例えば、私の場合は、奨学金の返済が丸々残っていましたが、「将来きちんと働いて返済する」と強調したら、債務整理せずに済みました。生活保護を受けると、奨学金の返済を延期できることが大きかったです。また、がん保険(生命保険扱い)にも入っていましたが、こちらも何とか認めてもらえました。解約した場合の払戻金まで1円単位で調べられていましたが…。ペット保険にも入っていましたが、こちらは解約してもお金にならないので、見逃してもらえました。全部が全部ダメということではなく、「なるべく早く社会復帰して働く」という意欲を見せることで、交渉することは可能です

  1. 生活保護の受給開始

     行政から、生活保護の受給の許可がおりたら、手続に行きます。

     最初にもらえるお金は、上記で計算した基本金から、資産を引いた金額になります。例えばA銀行に5,000円、B銀行に1,000円、手元に2,000円あれば、最低生活費から8,000円引かれた金額が支払われます

     最初は、ほぼ間違いなく手渡しになると思います。それからは、毎月の支払日に取りに行きます。受給者がずらりと並んでいて、いろいろ考えさせられます。半年くらい経って、行政側との信頼関係が生まれると、振込に変わります。

     

生活保護の実際
  1. 心がけること

     当然のことですが、体調を整えて、短時間でもいいので仕事を始める努力をしましょう

     ただ、実際には行政は障害者には優しいです。働きなさいと指導されたことは一度もありませんでした。私の場合は、週1日3時間程度の保育のパートをしたり、A型事業所で勤務したりしていましたが、長続きせず、どちらも2ヶ月程度で退職してしまいました

     精神障害者の場合、症状が安定しないので、就職活動の面で苦労したり(仕事のページで書いています)、仕事が続かなかったりします。そのことをケースワーカーさんも分かっているので、大概「無理しなくていい」と言われます。

     そうは言っても、何もしなくてもいいわけではないので(自分の生活と維持向上のため、できるかぎり努力する義務があります)、うつ病の当事者会、市区町村の相談所や社会福祉協議会、ハローワーク、障害者就業・生活支援センターなどに出向き、何とか社会復帰する方法を探りましょう。時間がかかっても構いません。継続することが自分のためにもなりますし、担当ケースワーカーさんへのアピールにもなります

     一番忘れてはいけないことは、少しでも収入があった場合は、すぐにケースワーカーに報告することです。私も、月の収入が3,000円程度の時にも報告していました。収入分は、翌月の最低生活費から引かれますが、勤務先から交通費が出ていない場合、自治体によっては交通費を出してくれるところもあります。


    参照

     千葉県うつ病当事者の会
     うつ病のNPO法人 ザフト 〜うつ病の当事者・家族会〜
     千葉県習志野市 社会福祉協議会による心配ごと相談
     習志野市 社会福祉協議会
     ハローワークインターネットサービス
     ジョブカフェちば
     ちば地域若者サポートステーション
     千葉県 障害者就業・生活支援センター

     

  1. 生活保護を受給してみて

     想像以上に辛かったのを覚えています。額面に関して言えば、これだけ頂ければ十分ありがたい、という感じです。切り詰めて生活する必要がありますが、毎日自炊して食費を抑えれば、普通に生活できます

     では何が辛かったかと言いますと、社会的な信用を一切失うことです。上にも書きましたが、生活保護は我々日本人の持つ権利です。生活の維持・改善の努力義務を果たしていれば、文句を言われる筋合いなどありません。堂々と受け取っていいものです

     しかし、中には偏見をもつ輩もいます。仕事もせず遊んでるとか、努力もせず人様のお金で生きていると言われることもあります。私が受給していた頃は、不正受給者を許すな!みたいな特別番組がブームで、その番組だけではなく、それに寄せられる一般の方からのコメントのあまりの冷たさに衝撃を受けたのを覚えています

     あと、趣味に時間を費やせなくなるのは結構辛いです。外出するのをためらうようになります。人生における「楽しみ」の9割ができなくなります。私はインドア派だったのでまだしも、趣味がアウトドアの人にとっては、かなり辛い思いをすることになると思います。友人に誘われて飲みに行くことも、好きな人ができてもデートに誘うことすらできません(してはいけないという意味ではありませんが…)。